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電気通信主任技術者試験 過去問解説 第1回

信頼性抜取試験



電気通信
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及び設備管理
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伝送 無線 交換 データ
通信
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電力
通信
線路
通信
土木
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線路

◆問題

平成26年度第2回(2015年1月実施)電気通信主任技術者試験の「伝送交換設備及び設備管理」と「線路設備及び設備管理」の 問4 (2)(ⅱ)の過去問です。余談ですが、設備管理の出題は、2つの科目で共通の問題が出題されているものがあります。 今回は、解説の第1回なので2科目共通の問題を選びました。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(カ)に適した番号を選ぶ問題です。

信頼性抜取試験について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(カ)である。

信頼性抜取試験では、一般に、大量生産品ではロットから、 生産量の少ない品目の場合にはアイテム集団から任意抽出したサンプルについて、 故障率などの信頼性を調べた結果に基づき全体の合否判定を行う。

抜取方式には計数型と計量型があり、 寿命時間を観測して合否判定を行う方式は、計量型抜取方式に分類される。

1回だけ抜き取ったサンプル中の故障件数のデータを観測して 合否の判定を行う方式は、一般に、計数1回抜取方式といわれる。

信頼性抜取試験の結果、合格水準である良いロットが 不合格になる確率は消費者危険率といわれ、不合格水準である悪いロットが合格となる確率は生産者危険率といわれる。

◆解答

誤っているものは、④です。消費者危険率と生産者危険率が逆になっています。

◆解説

◇概要

「JIS Z 8101-2:1999 統計 -用語と記号- 第2部 統計的品質管理用語」関連の出題です。

規格に関する出題では、正確な知識のあるなしで、結果が決まってしまうように思われがちです。 しかしこの問題では、正確な知識だけでなく、常識的な思考も重要となっています。

◇選択肢①

選択肢①は、正しい文章です。

信頼性抜取試験では、一般に、大量生産品ではロットから、 生産量の少ない品目の場合にはアイテム集団から任意抽出したサンプルについて、 故障率などの信頼性を調べた結果に基づき全体の合否判定を行う。

選択肢①のキーワードは、「信頼性抜取試験」です。「信頼性抜取試験」という用語は、JIS Z 8101-2:1999では定義されていません。 どこかに定義が 存在するのかも知れませんが、弊社では発見できておりません。 たとえ抜取試験が出題されると知っていても、規格の文章を丸覚えするだけでは対応できない出題です。 その点で、この問題は常識で判定しなくてはならない問題です。

◇選択肢②

選択肢②は、正しい文章です。

抜取方式には計数型と計量型があり、 寿命時間を観測して合否判定を行う方式は、計量型抜取方式に分類される。

選択肢②は、「計数」と「計量」の違いがポイントです。計数値とは、1、2、3、…と数えられるものです。 個数や回数などが該当します。 これに対して計量値とは、1、2、3と数えられないものです。言い換えれば、 小数で計ることができるものです。長さ、重量などが該当します。時間も小数で表すことができるので、 寿命時間は計量値です。

「計数」と「計量」は、「計数」はデジタル(不連続量)、と「計量」はアナログ(連続量)と捉え方もできます。

◇選択肢③

選択肢③は、正しい文章です。

1回だけ抜き取ったサンプル中の故障件数のデータを観測して 合否の判定を行う方式は、一般に、計数1回抜取方式といわれる。

選択肢③は、正確な知識が要求される問題です。一回抜取検査は、 JIS Z 8101-2:1999で、以下のように規定されています。

4.14 一回抜取検査

ロットの合格・不合格をあらかじめ定められた数 n の大きさの 一回のサンプルの結果から判定する抜取検査

このような出題に対しては、二回抜取検査多回抜取検査も関連づけて整理しておくと、効率的です。

4.15 二回抜取検査

サイズ n1 の第一サンプルの検査でロットの合格または不合格あるいは大きさ n2 の第二サンプルをさらに検査するかを判定する検査。判定は定められたルールに従って行われる。

二回抜取検査は、入学試験で行われる二段階選抜に似ています。大きな違いは、入学試験は合格者を絞り込むのに対して、 二回抜取検査は合格の絞り込みと不合格の絞り込みの両方がある点です。

4.16 多回抜取検査

それぞれのサンプルが検査され、定められたルールに従って、合格、不合格又はサンプルの追加が判定される抜取検査。判定ルールは累積されたサンプルによって行われる。

備考 ほとんどの多回抜取検査では合格・不合格を判定するまでのサンプルの最大抜取り回数が規定されている。

◇選択肢④

選択肢④は、誤った文章です。正しくは、下の文章のようになります。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

信頼性抜取試験の結果、合格水準である良いロットが 不合格になる確率は生産者危険率といわれ、不合格水準である悪いロットが合格となる確率は消費者危険率といわれる。

選択肢④のポイントは、消費者危険と生産者危険です。消費者危険は、JIS Z 8101-2:1999で、以下のように規定されています。

4.24 消費者危険

所定の抜取検査方式において、ロット又は工程の品質水準 (例えば、不適合品率)がその抜取検査方式では不合格と指定された値[例えば、限界品質水準 (LQL)]のときに、合格となる確率。

これに対して生産者危険は、JIS Z 8101-2:1999で、以下のように規定されています。

4.27 生産者危険

所定の抜取検査方式において、ロット又は工程の品質水準(例えば、不適合品率)がその抜取検査方式 では合格と指定された値[例えば、合格品質水準 (AQL)]のときに、ロット又は工程が不合格となる確率。

上の2つの規定では、「限界品質水準 (LQL)」と「合格品質水準 (AQL)」という用語が使われています。これらの定義は、以下のとおりです。

4.35 限界品質水準

limiting quality level(LQL)

一連の継続的ロットを考えたとき、抜取検査の目的では不満足な工程平均の限界と考えられる品質水準。

4.34 合格品質水準

acceptable quality level(AQL)

一連の継続的ロットを考えたとき、抜取検査の目的では工程の満足な平均品質の限界と考えられる品質水準。

◇規格は知らないと解答できない?

いま一度、④を見てみます。日本語を知っていれば、「消費者危険」を知らなくても、なんとなく意味がとれます。 おそらく消費者が損をしてしまう状況であろうと、想像することは難しくありません。

次に、抜取検査を振り返ってみます。 抜取検査はすべてを検査するわけではありません。そのため、抜取検査で合格したロットが全品検査をすれば不合格レベルだったり、 その逆に抜取検査で不合格になったロットが全品検査をすれば合格だったりするケースが発生します。 どちらのケースが消費者にとって損かというと、抜取試験で合格とされているのに実は不合格レベルであるケースです。この場合、 消費者は、設定された許容レベル以上の割合で不良品をつかまされることになります。

同じように、「生産者危険」は生産者が損をする状況、 つまり合格にできるはずのロットが抜取試験で不合格と判定されてしまうことと考えることができます。

このように考えを進めれば、規格の定義を知らなくても、問題文では消費者危険率と生産者危険率が逆になっていることがわかります。

この問題は、誤ったものを求める問題です。したがって、たとえ「計数」と「計量」を知らなくても、 また「一回抜取検査」を知らなくても、正しい答えを導くことが可能なのです。

◇常識も武器になります!

この問題のように、誤ったものを求める問題は、比較的難易度は低めです。明らかに間違ったものをひとつ見つければ 解答できます。正しいものを求める問題は、多少難易度が高くなります。明らかに正しい文章を見つけることが難しいからです。 そのため間違った選択肢をすべて見つけなくてはなりません。しかし、たとえ誤りをすべて見つけられなくても、 明らかに誤ったものをいくつか除ければ、五者択一や四者択一の問題を、三者択一や二者択一に変えることができます。 選択肢がABCの問題も、ひとつでも○×が確定すれば、少しは楽になります。

そもそも規格は、明文化されていなかった常識を、標準化して明文化したものという側面があります。 常識は規格の中に、活かされているはずです。未知の規格の問題に対して、常識は対応策のひとつになることを忘れないでいただきたいと思います。