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電気通信主任技術者試験 過去問解説 第21回

光通信などに応用されている光の性質



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通信
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通信
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通信
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◆問題

平成28年度第2回(2017年1月実施)電気通信主任技術者試験の「通信線路」の問1 (2)ⅰの過去問です。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(オ)に適した番号を選ぶ問題です。

光通信などに応用されている光の性質について述べた次の文章のうち、正しいものは、(オ)である。

 ①

光の波動としての性質に干渉がある。同一光源からの光を二つの光路に分け、再び合成したとき、 二つの光の位相がそろっているときはインコヒーレントな光といわれ互いに干渉しあい、 二つの光の位相がそろっていないときはコヒーレントな光といわれ互いに干渉しない。 光通信には、位相のそろったインコヒーレントな光が適している。

 ②

直線偏光が物体中を透過するとき、その偏光面が回転する現象は旋光といわれ、 直線偏光の進行方向に対し平行な磁界をかけることによって旋光性が現れる現象はポッケルス効果といわれる。 光カプラは、この現象を利用した光デバイスである。

 ③

光は互いに直交する電界と磁界によって構成される電磁波の一種であり、 光の進行方向と垂直に振動する横波である。電界の振動方向が一定した光は直線偏光、 進行とともに電界が回転する光は楕円偏光又は円偏光といわれる。

 ④

屈折率の高い媒質Aから入射した光が屈折率の低い媒質Bとの境界面に沿って進むときの入射光と 二つの媒質の境界面の法線とのなす角度はブリュースター角といわれ、入射角がこの角度より大きくなると 光は媒質Bに入ることができず全反射する。

◆解答

(オ):正しい選択肢は、②です。

◆解説

◇概要

光伝送に関する基本事項を問う問題です。平成25年度第2回(2014年1月実施)にも、ほぼ同様の出題がありました。 ちょうど3年ぶりの出題でした。

この問題に限って見れば、基本事項であるため、比較的対応は容易です。しかし、基本事項であるため、 関連事項も含めて整理することが大切です。

◇選択肢①の解説

選択肢①は、誤った文章です。正しくは、下のとおりです。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

光の波動としての性質に干渉がある。同一光源からの光を二つの光路に分け、再び合成したとき、 二つの光の 位相がそろっているときはコヒーレントな光といわれ互いに干渉しあい、 二つの光の位相がそろっていないときはインコヒーレントな光といわれ互いに干渉しない。 光通信には、位相のそろったコヒーレントな光が適している。

この問題のキーワードは、「コヒーレント」です。「インコヒーレント」は「非コヒーレント」の意味なので、 「インコヒーレント」が理解できれば、「インコヒーレント」も自動的に理解できます。

コヒーレントとは、光の波の波長や位相がそろっている状態です。 これに対して、インコヒーレントは光の波の波長や位相がそろっていない状態です。 人の集団の歩きに例えれば、コヒーレントは行進している状態です。 歩幅(=波長)も脚が動くタイミング(=位相)もぴったりとそろっています。 これに対してインコヒーレントは、 単に集団でぞろぞろと歩いている状態です。歩幅(=波長)も脚が動くタイミング(=位相)もバラバラです。

問題文では、同一光源からの光を二つの光路に分け、再び合成することを考えています。 コヒーレントな光の場合、同位相ならば元の波形に戻るだけですが、逆位相の場合は相殺して振幅がゼロになります。 つまり、干渉が発生します。これにインコヒーレントな光は、波長がばらばらなので、二つの光が相殺することはありません。 つまり、干渉が発生しません。 したがって、コヒーレントな光では干渉が発生し、インコヒーレントな光では干渉が発生しません。

「コヒーレント」には、「可干渉性」という日本語が当てられています。「インコヒーレント」は「不可干渉性」です。 これらの日本語が当てられているのは、上の理由に依るものなのです。

この問題では触れられていませんが、発光素子によって、光がコヒーレントかインコヒーレントかが異なります。 LED(発光ダイオード)の発する光はインコヒーレント、LD(レーザダイオード)の発する光はコヒーレントです。 したがって、光通信により適している発光素子はLDです。

◇(選択肢②の前に)選択肢③の解説

選択肢②で使われている「偏光」が、選択肢③で説明されているので、選択肢②の前に選択肢③を説明します。 選択肢③は、正しい文章です。

光は互いに直交する電界と磁界によって構成される電磁波の一種であり、 光の進行方向と垂直に振動する横波である。電界の振動方向が一定した光は直線偏光、 進行とともに電界が回転する光は楕円偏光又は円偏光といわれる。

光は電磁波の一種です。電波も赤外線も紫外線も、電磁波です。これらの違いは、波長または周波数だけです。 光(正確には可視光線)の波長は、360~830〔nm〕くらいです。

電磁波の電界が特定の方向へ向いていることを、偏波と呼びます。光の場合は、偏光です。 偏光には、偏光面が変化しない直線偏光、偏光面が回転する楕円偏光や円偏光があります。

一般的な電磁波の偏波に話を戻しますが、直線偏波には垂直偏波と水平偏波があります。 電界の向きが、大地に対して垂直か水平かという表現です。無線伝送において、よく使われる言葉です。 その影響で、偏光にも垂直偏光や水平偏光という言葉が使われることがあります。 光ファイバの中の偏光面について、大地に対して垂直や水平を語っても意味がなさそうですが、電波のイメージを継承しているようです。 ちなみに、垂直偏光や水平偏光では、「電界」の向きである点がポイントです。「磁界」では、水平と垂直が逆になってしまいます。

◇選択肢②の解説

選択肢②は、誤った文章です。正しくは、下のとおりです。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。 なお、この問題文は、平成25年度第2回(2014年1月)にも出題されています。

直線偏光が物体中を透過するとき、その偏光面が回転する現象は旋光といわれ、 直線偏光の進行方向に対し平行な磁界をかけることによって旋光性が現れる現象はファラデー効果といわれる。 光アイソレータは、この現象を利用した光デバイスである。

ファラデー効果とは、 直線偏光の光に磁界をかけることによって旋光性が現れる現象です。 このときの磁界は、光の進行方向に対し平行な磁界です。このファラデー効果を応用した素子が、ファラデー回転子です。

ファラデー回転子を利用すると、特定方向の光のみを通過させることができます。 この素子は、光アイソレータと呼ばれます。光アイソレータの例として、偏波依存型光アイソレータの動作原理を、 下の図に示します。偏波依存型光アイソレータは、ファラデー回転子と偏光子を組み合わせた構造をしています。 入力光と反射光の偏波の違いにより、反射波を遮断します。

Fig.ファラデー回転子

光アイソレータは、物質から受ける効果が光の伝搬方向によって異なる性質を持ちます。 このような性質は、「非相反性」と呼ばれます。

◇選択肢④

選択肢④は、誤った文章です。正しくは、下のとおりです。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。 なお、この問題とほぼ同じ問題が、平成24年度第1回(2016年7月)、 平成25年度第2回(2014年1月)にも出題されています。

屈折率の高い媒質Aから入射した光が屈折率の低い媒質Bとの境界面に沿って進むときの入射光と 二つの媒質の境界面の法線とのなす角度は臨界角といわれ、入射角がこの角度より大きくなると 光は媒質Bに入ることができず全反射する。

屈折率は、光の伝播速度の遅さという側面があります。 光は真空中で最も速く伝播するので、屈折率は最も小さくなり、その値は1です。 そして、物質によって、屈折率は1より大きな値を持つことになります。

屈折率を語るときに、光の入射角がしばしば話題になります。ここで注意が必要なのは、 入射角はどの角度を指しているかです。問題文にもあるフレーズですが、「二つの媒質の境界面の法線とのなす角度」です。 ここで法線とは、直角をなす線です。「二つの媒質の境界面となす角度」ではありません。 つまり、入射角がゼロとは、境界面に垂直に入射する場合です。

屈折率の高い物質Aと屈折率の低い物質Bは、光ファイバにおいてはガラスやプラスチックです。 本物の代わりに、屈折率の高い物質Aを水、と屈折率の低い物質Bを空気とすると、イメージしやすくなります。 下の図では、下半分の屈折率n1の物質が水、上半分の屈折率n2の物質が空気に対応します。 水の屈折率は、空気の屈折率より大きいので、n1>n2です。

下の3つの図では、高い媒質Aから入射した光が屈折率の低い媒質Bに入射する様子を示しています。

Fig.屈折と全反射

左の図は、入射角が小さい場合です。光は屈折しながら境界面を突き抜けます。これに対して右の図は、 入射角が大きい場合です。光は境界面で反射します。この現象は、全反射と呼ばれます。 左の図における小さい入射角を大きくしていくと、右の図のような全反射に至ります。 その間のどこかに、光が境界面を越えられずに全反射する角度があります。この境界となる角度が臨界角です。中央の図のケースです。

なお、「ブリュースター角」は偏光に関するキーワードです。 今回のように「臨界角」の引っかけ候補として登場することが多く、「ブリュースター角」自体の出題はまれです。 直近では、平成23年度の第2回(2012年1月)に、以下のような形で正しい文章として出題されています。

屈折率n1の誘電体から屈折率n2の誘電体に、電界が入射面と平行な光(P偏光)が入射するとき、 φ12が90度で無反射になる現象が生じ、 このときのφ1はブリュースター角といわれる。

◇安易なイメージは危険!

選択肢①の「コヒーレント」についてですが、コヒーレント=良質というイメージがあります。 この「良質」を安易に捉えると危険なので、ご注意ください。良質=「あらゆる面で優位」と捉えるとつまずきます。

たとえば、選択肢①の問題文が以下のような形だったら、どのように見えるでしょうか。

光の波動としての性質に干渉がある。同一光源からの光を二つの光路に分け、再び合成したとき、 二つの光の位相がそろっていないときはインコヒーレントな光といわれ互いに干渉しあい、 二つの光の位相がそろっているときはコヒーレントな光といわれ互いに干渉しない。 光通信には、位相のそろったコヒーレントな光が適している。

最後の一文では、コヒーレントな光のほうが光通信に適している(この点は正しい)とあるので、 ならば良質なココヒーレントな光であれば干渉も発生しにくい(この点は誤り)と想像しがちです。 このように、コヒーレントの良質さを安易に捉えると、つなげてはいけない話をつなげてしまい、誤った結論を導いてしまいます。

上の誤りの原因のひとつは、干渉が発生する条件を考えていない点にあります。単に干渉を好ましくない現象と捉えているのです。 そのため、良質なコヒーレントな光では発生しないと考えてしまったのです。

このように、良質や悪質といった安易なイメージで考えると、誤った結論になってしまうことがあります。 良質でも悪質でも、どのような性質が結果に影響しているかを整理することが大切です。