Manifold
株式会社マニフォールド
  1. ホーム
  2. サービス
  3. 講習会コース体系
  4. 電気通信主任技術者試験 受験対策
  5. 過去問解説
  6. > 2016. 1.20 公衆交換電話網(PSTN)の輻輳

電気通信主任技術者試験 過去問解説 第16回

公衆交換電話網(PSTN)の輻輳



電気通信
システム
伝送交換設備
及び設備管理
線路設備
及び設備管理
伝送 無線 交換 データ
通信
通信
電力
通信
線路
通信
土木
水底
線路

◆問題

平成27年度第2回(2016年1月実施)電気通信主任技術者試験の「交換」の 問1 (3)の過去問です。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(カ)に適した番号を選ぶ問題です。

公衆交換電話網(PSTN)の輻輳について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(カ)である。

ネットワークにおいて、一定の限界を超えて継続してトラヒックが集中することにより交換機などが過負荷状態となり、 通信の疎通能力が継続して著しく低下する現象は、一般に、輻輳といわれ、企画型輻輳、災害型輻輳などの種類がある。

ネットワークの輻輳などが原因で接続できなかったユーザが繰り返し発呼する状態を防ぐことなどにより、 ネットワークの品質低下を抑える方法は、一般に、分散制御といわれる。

ネットワークが輻輳した状態において、緊急通信、重要通信などを優先して接続するために、 常に一定数の空き回線を確保しておき、残りの回線で非優先呼を接続する方法は、一般に、留保制御といわれる。

ネットワーク設備に空きがある場合に、輻輳制御の一つとして、 輻輳箇所を迂回し空き設備を有効に使うルーティング制御を行う方法がある。

◆解答

(カ):誤っている選択肢は、②です。

◆解説

◇概要

この問題のテーマは、輻輳です。

出題元の科目は専門的能力の交換ですが、輻輳は伝送交換設備および設備管理でも出題されるテーマです。

輻輳の意味のポイントは、負荷と集中です。交換機の設計時には、呼量を想定して、交換機の処理能力や中継回線等の容量を決めます。 この想定されたレベルを越えた呼が発生して、負荷が特定の交換機に集中し、通信ができなくなる状態が、輻輳です。

◇選択肢①

選択肢①は、正しい文章です。

ネットワークにおいて、一定の限界を超えて継続してトラヒックが集中することにより交換機などが過負荷状態となり、 通信の疎通能力が継続して著しく低下する現象は、一般に、輻輳といわれ、企画型輻輳、災害型輻輳などの種類がある。

この文章では、輻輳を企画型輻輳と災害型輻輳にほぼ大別しています。他にも輻輳の型がありそうですが、他の○○型輻輳は、 少なくてもこの数年の出題の中では登場していないので、試験対策的には存在しないと見なせると思います。 この点が、「輻輳」という言葉に対して、しばしば発生する誤解を解く鍵になります。 このしばしば発生する誤解とは、「輻輳=交換網が負荷過剰状態」という誤解です。

輻輳とは、設計時に想定されたレベルを超える負荷が集中することにより発生する現象です。 逆に言えば、設計時に想定されていない負荷に起因するもの、またはトラヒックの集中によるものでなければ、輻輳ではありません。 たとえば、交換網の障害により通常のレベルの呼が処理しきれなくなった場合、 負荷過剰で疎通能力が低下しても輻輳ではありません。これは単なる交換網の障害です。 つまり、輻輳は交換網が正常であるにもかかわらず、トラヒックの集中により負荷過剰になる状態です。

本題に戻りまして、企画型輻輳と災害型輻輳です。企画型輻輳は、チケットの予約、放送局の電話受付等の企画で、企画主催者への呼が集中することにより発生する輻輳です。 これに対して災害型輻輳は、災害状況の確認や安否確認など、 被災地外から被災地への呼が集中することにより発生する輻輳です。

災害型輻輳の出題例に、平成22年第1回の伝送交換設備および設備管理の問2(2)③があります。

災害型輻輳は、被災地の住民が自分たちの安否を被災地外の知人などに知らせようとして一斉に発信する場合に発生する。

この文章は、呼の向きが逆になっています。被災地から被災地外ではなく、正しくは被災地外から被災地です。 輻輳が呼の集中によるものだという点を押さえていれば、すぐに間違いだと判別できます。

◇選択肢②

選択肢②は、誤った文章です。正しくは、以下のようになります。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

ネットワークの輻輳などが原因で接続できなかったユーザが繰り返し発呼する状態を防ぐことなどにより、 ネットワークの品質低下を抑える方法は、一般に、発信規制といわれる。

特定の交換機に呼が集中することを防ぐための規制には、3つの方法があります。発信規制、入呼規制、出接続規制です。

1つ目の発信規制は、負荷が高くなっている交換機における規制です。交換機に接続された端末からの発信を、受け付けないように規制します。

2つ目の入呼規制は、発信規制と同じく、負荷が高くなっている交換機における規制です。他の交換機からの呼を受け付けないように規制します。

3つ目の出接続規制は、負荷が高くなっている交換機に接続する別の交換機における規制です。 交換機の出接続先が、負荷が高くなっている交換機の場合、その交換機への出接続を規制します。

輻輳規制の図

この問題文の説明には、「ユーザが繰り返し発呼する状態を防ぐ」とあるので、 明らかに発信規制です。

元の問題文にある「分散制御」は、大きな負荷を、複数のもので分散して処理する方式です。 公衆交換電話網においては、端末に対して端末を収容する加入者線交換機は1台なので、 複数の交換機で負荷を分散することはできません。

◇選択肢③

選択肢③は、正しい文章です。

ネットワークが輻輳した状態において、緊急通信、重要通信などを優先して接続するために、 常に一定数の空き回線を確保しておき、残りの回線で非優先呼を接続する方法は、一般に、留保制御といわれる。

まずは、背景から整理します。出発点は、電気通信事業法の以下の条文です。

(重要通信の確保)

第八条 第一項 電気通信事業者は、天災、事変その他の非常事態が発生し、又は発生するおそれがあるときは、 災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保又は秩序の維持のために必要な事項を内容とする通信を 優先的に取り扱わなければならない。 公共の利益のため緊急に行うことを要するその他の通信であって総務省令で定めるものについても、同様とする。

第八条 第二項 前項の場合において、電気通信事業者は、必要があるときは、総務省令で定める基準に従い、 電気通信業務の一部を停止することができる。

かいつまむと、第一項は重要通信は優先的に取り扱うべし、 第二項はそのためには重要通信以外の通信(問題文の「非優先呼」)を止めてもお咎めなし、ということです。 逆にいえば、非優先呼を止めてでも、重要通信は確保しなくてはならないのです。

そこで重要通信を確保するために何をするかが、選択肢③の問題文です。 非優先呼が回線を使い切ると、重要通信が確保できなくなります。そこで、重要通信用の回線を空けておき、 残りで非優先呼を扱う形にしています。この制御は、留保制御と呼ばれます。

余談ですが、留保制御の話をみるたびに、航空便の空席の話を思い出します。国際線では、 急用のVIPや上級会員のために、いくつか席を確保しているという話を聞いたことがあります。 留保制御は、国際線の空席確保と似たものだと思います。いつ搭乗するかわからない重要通信というVIPのために、 空席ならぬ回線を常に確保する、そんなイメージです。

◇選択肢④

選択肢④は、正しい文章です。

ネットワーク設備に空きがある場合に、輻輳制御の一つとして、 輻輳箇所を迂回し空き設備を有効に使うルーチング制御を行う方法がある。

この制御は、拡大制御と呼ばれます。

呼制御に注目すると、共通線信号網では固定ルーチングを採用しています。 (共通線の話題のときは「ルーティング」より「ルーチング」がよく使われます。) 固定ルーチングとは、送信元から宛先までの経路を固定する方式です。通常は経路の変更は行われません。 しかし、信号リンクに異常が発生した場合は、切り替えおよび切り戻しが行われます。障害時だけは、 動的ルーチングです。

共通線信号網が固定ルーチングを採用する理由は、順序制御を不要にするためです。 動的ルーチングを行うと、通信中の経路の切替が発生することがあります。 経路が切り替わると、信号の順序が入れ替わりが起きます。 このとき、切替前の遅い経路を通った信号より、切替後の速い経路の信号が先に到着することがあるのです。 このような到着順の入れ替わりに対応するための仕組みが、順序制御です。 共通線信号網では、経路が障害で使用不能にならない限り、経路の切り替えはおこないません。 固定ルーチングによって、信号の入れ替わりを排除しています。 そのため、順序制御の実装が不要なのです。

◇一方、IP網では…

選択肢①の解説にある輻輳の意味は、公衆交換電話網における輻輳です。 同じ「輻輳」でも、IP網の「輻輳」は単なる負荷過剰状態です。 TCPには輻輳制御の機能がありますが、この「輻輳制御」の「輻輳」はネットワークの帯域をほぼ使い切っている状態です。 IP網では、設計を越える負荷であろうが、他のネットワークの障害に起因する負荷であろうが、 原因は関係なしです。 また、負荷の集中なのか、帯域不足なのかも関係なしです。 結果としてネットワークの帯域をほぼ使い切ると、「輻輳」です。 同じ言葉でも、意味が微妙に異なります。

経路選択への対応も、公衆交換電話網とIP網では、対照的です。 公衆交換電話網は、固定ルーチングにより、順序制御の必要性を排除しています。IP網は、 動的ルーチング(とはあまり呼ばれず「ダイナミック・ルーティング」ですが)が使えるので、 順序制御が必要になります。だから、TCPやRTPのヘッダにはシーケンス番号があり、 順序制御の機能が実装されているのです。

交換網とIP網のしくみは、まったく別物です。それでも、網=ネットワークという点は、共通です。 そのため、意外と比較対象ができる点があります。このような点は、できるだけ整理してみてください。 ばらばらに記憶するよりいろいろと関連付けたほうが、記憶の負担を多少は軽くできると思います。