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電気通信主任技術者試験 過去問解説 第12回

ケーブルなどの線路設備の劣化とその対策



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◆問題

平成28年度第1回(2016年7月実施) 電気通信主任技術者試験の「線路設備及び設備管理」の 問3 (2)(ⅰ)の過去問です。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(オ)に適した番号を選ぶ問題です。

ケーブルなどの線路設備の劣化とその対策について述べた次の文章のうち、正しいものは、(オ)である。

管路に布設されたケーブルには、ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などにより ケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。 対策としては、マンホール内においてケーブル移動防止金物を用いて 機械的にケーブル移動を止める方法が有効である。

寒冷地において、ケーブル引上げ点、橋梁添架などの管路が大気中に露出している箇所で管路内の溜水が凍結すると、 体積膨張によりケーブルに過大な力が働き、環境応力亀裂(ESC)が発生することがある。対策としては、ケーブル布設時に外被に界面活性剤を塗布する方法が有効である。

光ファイバケーブルの布設時に、捻回によって光ファイバテープ心線の波打ち現象が発生し、 光損失が増加する場合がある。対策としては、光ファイバケーブルの牽引端でケーブル外被と光ファイバテープ心線とを一緒に固定せず、 さらに、撚り返し金物を取り付ける方法が有効である。

ケーブル部と吊線部との間のスリットを大きくして首部に窓をあけた構造の自己支持形光ファイバケーブルは、 軽量であるため、布設作業などが容易であるが、強風地域においては、ダンシングによって外被亀裂(リングカット)が生じやすい。 対策としては、スリットのない自己支持形光ファイバケーブルを適用する方法が有効である。

◆解答

正しい選択肢は、①です。

◆解説

◇概要

線路設備の劣化に関する出題です。それぞれの選択肢のテーマは、クリーピング、環境応力亀裂(ESC)、 波打ち現象、ダンシング現象となっています。いずれも過去に複数回出題されています。その点で、 基本的な問題と言えます。

◇選択肢①

選択肢①は、正しい文章です。

管路に布設されたケーブルには、ケーブルの温度伸縮や車両の通過に起因する振動などにより ケーブルが移動するクリーピングといわれる現象が発生することがある。 対策としては、マンホール内においてケーブル移動防止金物を用いて 機械的にケーブル移動を止める方法が有効である。

クリーピングとは、問題文にあるように、管路の中でケーブルが移動する現象です。クリーピングが発生すると、 ケーブルに曲げや応力が加わるため、伝送品質が劣化する危険性が高まります。

クリーピングは、 以下のようなケースで発生しやすくなります。

  • 軟弱地盤で大型車両の通行が多い。
  • 傾斜地で、車両の通行量が多い。
  • 路面の凹凸が著しく、直線道路などで車両の速度が高くなりやすい。
  • 走行車両のほぼ真下にケーブルが埋設されている。
  • 橋梁が添架されている場合など、温度変化が大きい。

クリーピング対策には、機械的に止める方法と、ケーブルに余長を持たせる方法があります。

機械的に止める方法は、ケーブルの移動の発生を防ぐ方法です。移動防止金具によりケーブルを固定します。 移動防止金具には、A形とB形があり、要求される把持力により使い分けます。

ケーブルに余長を持たせる方法は、温度伸縮による変化を吸収する方法です。 あらかじめケーブルに温度収縮による余長(スラック)を設けます。 温度変化の激しい橋梁添架ケーブルで使われる方法です。余長(スラック)は、 橋詰マンホールにおいて水平に設けると効果的とされています。

◇選択肢②

選択肢②は、誤った文章です。アンダーライン部分が、誤っている部分です。

寒冷地において、ケーブル引上げ点、橋梁添架などの管路が大気中に露出している箇所で管路内の溜水が凍結すると、 体積膨張によりケーブルに過大な力が働き、環境応力亀裂(ESC)が発生することがある。対策としては、 ケーブル布設時に外被に界面活性剤を塗布する方法が有効である。

環境応力亀裂(ESC)とは、ポリエチレンにおいて環境媒質と応力との相互作用により発生する劣化です。

環境応力亀裂は、環境と応力の2つの原因によって発生します。 環境応力亀裂の原因となる環境は、外被のポリエチレンが、アセトン、アルコール、 石鹸水などの極性の強い液やグリースに浸された環境です。 この環境で、応力によるひずみが生じると、ポリエチレン分子の結合力が低下します。 この結合力の低下が原因となって、亀裂が発生します。

環境応力亀裂への対策は、環境媒質との接触と応力負荷の発生の2つの発生条件を取り除くことです。

環境媒質との接触については、ケーブル布設時には、事前に管路の清掃を行いケーブルに傷がつかないようにします。 また、中性洗剤などの界面活性剤の使用を避けます。 応力負荷については、ケーブル外被に不要な外力を加えないようにし、外被の座屈を生じさせないようにします。 座屈が生ずる場合は、その部分のケーブル外被のひずみを除去します。

したがって、問題文にある「外被に界面活性剤を塗布する」は、環境応力亀裂が発生しやすい環境を作ってしまうことになり、 むしろ逆効果です。

◇選択肢③

選択肢③は、誤った文章です。アンダーライン部分が、誤っている部分です。

光ファイバケーブルの布設時に、捻回によって光ファイバテープ心線の波打ち現象が発生し、 光損失が増加する場合がある。対策としては、 光ファイバケーブルの牽引端でケーブル外被と光ファイバテープ心線とを一緒に固定せず、 さらに、撚り返し金物を取り付ける方法が有効である。

波打ち現象とは、ケーブル内の光ファイバテープ心線に、細かい曲げが連続して発生する現象です。 ケーブルの牽引時に、牽引端において光ファイバテープ心線とケーブル外被が固定されていない場合に発生します。 また、人力で牽引した場合に、発生しやすくなります。

波打ち現象の発生メカニズムを、下の図に示します。

波打ち現象の発生メカニズムの図

波打ち現象の対策は、以下の通りです。

  • 牽引端を作成する際には、光ファイバテープ心線を外被に固定する。
  • ケーブルの牽引時には、張力制御が可能なケーブル牽引機などを使用する。
  • ケーブルの牽引時には、ケーブル牽引速度を、20 m/分以下とする。
  • 各ケーブルの許容牽引張力を越える課題な張力を加えない。
  • ケーブル牽引時とケーブル固定時の曲げは、各ケーブルの最小曲率半径以下にしない。

したがって問題文にある「ケーブル外被と光ファイバテープ心線とを一緒に固定せず」は誤りです。

また、「撚り返し金物」ですが、これは捻回を防ぐための器具です。波打ち現象とは無関係です。

◇選択肢④

選択肢④は、誤った文章です。正しくは、以下のようになります。アンダーライン部分が、誤っている部分です。

ケーブル部と吊線部との間のスリットを大きくして首部に窓をあけた構造の自己支持形光ファイバケーブルは、 軽量であるため、布設作業などが容易であるが、強風地域においては、ダンシングによって 外被亀裂(リングカット)が生じやすい。 対策としては、スリットのない自己支持形光ファイバケーブルを適用する方法が有効である。

自己支持形ケーブルは、 架設時の作業性を向上させるため、ケーブルの心線を亜鉛めっき鋼撚り線など と共通被覆したものです。

自己支持形ケーブルは、ケーブルの断面形状がひょうたん形なので、丸形ケーブルと比べ受風 面積が大きくなり、揚力が大きく作用する。この揚力がケーブル自体のねじれ振動と相乗し、共振 による大きな振動が発生します。この現象は、ダンシング現象と呼ばれます。

ダンシングの振動が支持線の切り際に集中することで発生ると、外被亀裂(リングカット)が発生します。 外被亀裂(リングカット)は、ケーブル円周方法の亀裂が発生する現象です。 風速が年平均2〔m/s〕以上の地域において、発生しやすいと言われています。

リングカットを防ぐためには、ダンシングを抑える必要があります。ダンシングを抑えるためには、 ケーブルに作用する揚力を小さくすることが必要です。その方法のひとつが、 ケーブル心線と支持線の間にスリット(切れ込み)を入れることです。 スリットを入れることにより、揚力が減少し、ダンシングが抑えられます。

したがって問題文では、スリットを大きくした自己支持型ケーブルは 「外被亀裂(リングカット)が生じやすい」とありますが、 これは誤りです。スリットを大きくすると、揚力は減少し、ダンシングが抑えられ、 外被亀裂の危険性を低減できます。

ダンシングを抑える方法には、ケーブルに捻回を入れる方法もあります。捻回を入れることにより、 上方向の揚力と下方向の揚力が平衡し、ダンシングを抑えることができます。さらに捻回は、 ダンシングを防ぐだけでなく、ケーブルにかかる水平風圧荷重も減少させる効果もあります。

また外被亀裂を防ぐためには、ダンシングを抑える以外に、以下の対策も有効です。

  • HSケーブルへの張り替え
  • 縛りひもによるゆがみの分散
  • リング掛けによるケーブル架渉

◇因果関係のつながりに注目

劣化と対策のような関係のあるものについては、原因と結果の関係をしっかりと押さえてください。

自己支持型ケーブルならば、光ファイバと支持線を共通被覆 → 断面がひょうたん形  → 揚力が大きく作用する → ダンシング現象という流れです。 このような整理をしておけば、多少、芯を外した出題があっても、ある程度の対応が可能です。

たとえば、以下のような文章の正誤を問われた場合を考えてください。

自己支持型ケーブルは、強風地域での使用に適している。

自己支持型ケーブルの大敵は、ダンシング現象です。これが把握できていれば、 強風はケーブルに作用する揚力を高め、ダンシング現象を発生させやすくする要因であることが、 すぐに結びつけられます。したがって、上の文章は誤りと判断できます。

過去問と同じテーマの出題は、多少捻りを入れてくることが多々あります。そのようなケースに 対応できるようになるために、因果関係のつながりの整理も心がけてください。