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電気通信主任技術者試験 過去問解説 第8回

伝送路符号



電気通信
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及び設備管理
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通信
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◆問題

平成27年度第1回(2015年7月実施)電気通信主任技術者試験の「伝送」の 問1 (2)の過去問です。 平成24年度第2回(2013年1月実施)の問1 (3)にも同じ問題が出題されています。

出題は、下のとおりです。アンダーラインの部分の(オ)に適した番号を選ぶ問題です。

伝送路符号の種類と特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、(オ)である。

AMI符号は、2進符号の1に対してその出力極性を交互に反転する形式である。AMI符号は3値符号を使用しているにもかかわらず、情報量は2値符号と同一である。

BnZS符号は、バイポーラ符号列の0がn個連続するブロックを特殊なパターンに置換する形式であり、nを小さくするとゼロ符号連続の長さは短くなるが、置換パターンの出現頻度が多くなる。

CMI符号は、0の入力に対しては01を、1の入力に対しては00と11を交互に送出する形式である。クロック周波数が情報伝送速度の1/2となり、高い周波数成分が減少するため、中継距離を長くすることができる。

HDBn符号は、バイポーラ符号列の0がn+1個連続するブロックを特殊なパターンに置換する形式であり、特殊なパターンには、その最終ビットでバイポーラ反則が発生するものが選ばれる。

◆解答

誤っている選択肢は、③です。

◆解説

◇概要

伝送路符号に関する問題です。符号方式のルールを知っているだけでは、解答が難しい内容も含まれています。

①のAMI符号や③のCMI符号は基本的なキーワードです。出題頻度も高い方です。AMI符号とCMI符号は、 「伝送交換設備及び設備管理」でも、出題されたことがあります。 「伝送交換設備及び設備管理」では、AMI符号、CMI符号、マンチェスタ符号の波形を選択させる問題が、比較的出題頻度の高い問題です。近年では、 マンチェスタ符号の代わりに、両極NRZ符号が登場しています。

AMI符号やCMI符号に対して、②のBnZS符号や④のHDBn符号は出題頻度の低い用語です。平成24年度第2回(2013年1月実施)以来の登場です。そのため問題全体としては、難易度が高い問題です。

◇伝送路符号に求められる性質

選択肢の説明の前に、伝送路符号に求められる性質について整理します。 伝送路符号では、以下の3つの性質が求められます。

  • タイミング抽出が行えること
  • 直流成分が少ないこと
  • 高周波成分が少ないこと

これらの性質は、常に実現されているわけではありません。伝送路符号によっては、不十分な性質もあります。 その点が、伝送路符号を評価する上でのポイントのひとつとなります。

上記の3点のほかに、暗黙の大前提があります。それは、高性能と低コストが望ましいという点です。 どんなに優れた技術でも、性能が低くては、またはコストが高くなりすぎては、採用できません。 なお、低コストであるためには、変調のしくみが単純であるほうがベターです。

●求められる性質1:タイミング抽出が行えること

正しく伝送を行うためには、受信側でビットの区切りを正しく認識できなければなりません。 そのためには、送信側と受信側でタイミングを合わせることが求められます。 このタイミングを合わせることは、同期と呼ばれます。 同期方式は、一般的には以下の2方式があります。

  • 外部タイミング方式
  • 自己タイミング方式

外部タイミング方式は、同期信号を、データとは別の信号で送る方式です。 パソコンの内部の信号は、この方式です。パソコン内部では、データ線とは別の線から供給されるクロック信号により同期をとっています。 外部タイミング方式は、データ伝送用とは別の信号線が必要になるため、長距離の伝送に適していません。

自己タイミング方式は、送信する符号列そのものに同期信号を組み入れる方式です。 伝送路符号では、自己タイミング方式が使われます。

では、「符号列そのものに同期信号を組み入れる」とは、どのように実現するのでしょうか。 それは、信号のレベルの変化、立ち上がりや立ち下がりを入れることにより、タイミングを合わせるのです。

タイミング抽出の点で優れる伝送路符号のひとつに、マンチェスタ符号があります。 マンチェスタ符号は、符号ビットのスロット中で、0の場合は正値から負値へ、 1の場合は負値から正値へ変化させる符号です。 必ず符号ビットのスロットの中央に信号のレベルの変化があるため、どのようなビットの並びであっても、ビットの区切りを受信側で確実に識別することできます。

マンチェスタ符号の図

反対に、タイミング抽出の点で問題がある伝送路符号のひとつに、両極NRZ符号があります。 両極NRZ符号は、1の場合は正値、0の場合は負値にする符号です。 1や0が連続すると、レベルの変化がなくなるため、タイミング抽出が難しくなり、同期が外れるリスクが高くなります。

両極NRZ符号の図

●求められる性質2:直流成分が少ないこと

直流成分とは、信号のレベルを平均したときに現れる成分です。直流成分が少ないとは、 平均すればゼロに近くなるということです。

では、なぜ直流成分を少なくする必要があるのでしょうか。それは、 伝送路には、直流成分を通過させない回路が接続されている場合があるからです。 直流成分を通過させない回路の代表は、変成器を含む回路です。 変成器を通すと、直流成分が失われるため、正しく符号を伝送することができなくなります。

マンチェスタ符号は、直流成分が少ない点でも優れています。値が0であっても1であっても、ビット単位の平均はゼロです。 そのため、ビットの並びに依らず、直流成分はゼロとなります。

これに対して、両極NRZ符号は、直流成分の点でも問題があります。1や0が連続すると、 直流成分が大きくなります。

●求められる性質3:高周波成分が少ないこと

高周波成分が少ないとは、信号のレベルの変化がゆっくりであるということです。

下の図は、左がマンチェスタ符号、右がMLT-3符号の波形です。MLT-3符号は、0のときにレベルの変化なし、 1のときにゼロ→正→ゼロ→負→ゼロと変化させる符号です。 信号波形の実線に重ねてある正弦波の赤い線に注目してください。AMI符号に比べてMLT-3符号は、 波長が4倍、つまり周波数は1/4になります。MLT-3符号のほうが、4倍ゆっくりと信号が変化しています。

マンチェスタ符号とMLT-3符号の図

では、なぜ高周波成分が少ないほうが良いのでしょうか。これは2つの面から考える必要があります。

まず、情報伝送速度が同じ場合を考えます。この場合は、高周波成分が少ないほうが伝送距離が長くなります。 これは、高周波のほうが減衰が大きいからです。また、周波数が高くなると、制御に精度が要求されるため、コストを上げる要因のひとつとなります。

次に、周波数が同じ場合を考えます。この場合は、 高周波成分が少ないほうが多くの情報を伝送できます。下の図は、マンチェスタ符号とMLT-3符号を同じ周波数で比べたものです。 MLT-3符号が4倍の情報を伝送していることがわかります。

同じ周波数のマンチェスタ符号とMLT-3符号の図

余談ですが、マンチェスタ符号はイーサネットの10BASE-Tで採用され、MLT-3符号は100BASE-TXで採用されています。 10BASE-Tと100BASE-TXの間には、10倍の性能差がありますが、そのうち4倍分はマンチェスタ符号とMLT-3符号の違いによるものなのです。

◇選択肢①

選択肢①は、正しい文章です。

AMI符号は、2進符号の1に対してその出力極性を交互に反転する形式である。AMI符号は3値符号を使用しているにもかかわらず、情報量は2値符号と同一である。

AMI符号は、0のときにゼロ、1のときに正値と負値を交互にとる符号です。通常のAMI符号は、1のとき、ビットスロットの後半は、レベルをゼロにします。

AMI符号の図

AMI符号では、正と負の両方の極性を使います。このような、正と負の両方の極性を使う符号は、バイポーラ符号と呼ばれます。 バイポーラ符号に対して、一方の極性だけを使う符号化方式はユニポーラ符号と呼ばれます。そして、AMI符号は代表的なバイポーラ符号であるため、「バイポーラ符号」がAMI 符号を示すこともあります。 これを知らないと、次の選択肢②の問題文が読み解けません。

AMI符号では、信号レベルが、正値、ゼロ、負値の3つを取ります。このような符号を、3値符号と呼びます。これに対して、 信号レベルが、正値と負値、またはゼロと負値など、2つの値を取る符号を、2値符号と呼びます。 一般に、信号レベルの数が増えれば、伝送できる情報量は増えます。たとえば、4値符号になれば、4=22なので、1つのビットスロットで 2ビットの情報を伝送できます。しかし、AMI符号は3値になっても、伝送できる情報量は2値符号と変わりません。 では、増やせるはずの情報量は、どこへ行ってしまったのでしょうか。

AMI符号の長所は、直流成分の少なさです。正値と負値が交互に出現するため、直流成分が生じても、高々1ビット分です。 一般には3値符号になれば伝送できる情報量が増えますが、AMI符号では正値と負値を交互にする制約が加わるため、伝送できる情報量は増えていません。 つまり、AMI符号では伝送する情報量を増せる能力を、直流成分を減らす能力として使っているのです。

AMI符号の短所は、タイミング抽出が保証されていない点です。0が連続すると、レベルの変化がなくなるため、タイミング抽出が難しくなります。 この点を改善したものが、選択肢②のBnZS符号や選択肢④のHDBn符号となります。

◇選択肢②

選択肢②は、正しい文章です。

BnZS符号は、バイポーラ符号列の0がn個連続するブロックを特殊なパターンに置換する形式であり、nを小さくするとゼロ符号連続の長さは短くなるが、置換パターンの出現頻度が多くなる。

問題文にあるバイポーラ符号は、AMI符号のことです。AMI符号は、0が連続するとレベルの変化がなくなるため、タイミング抽出が難しくなります。 そこで、連続する0を特殊なパターンで置き換える符号が考えられました。そのひとつが、BnZS符号です。

連続する0を特殊なパターンに置き換えるときに課題となるのは、0や1の並びでは現れないパターンに置き換えなくてはならないという点です。 そうしなければ、受信側で置き換えパターンに一致する0や1の並びが連続する0とみなされてしまうからです。

BnZS符号では、0や1の並びでは現れないパターンを作るために、バイポーラ反則を使います。 バイポーラ符号(=AMI符号)は、1があるたびに極性を反転させます。正値のあとにゼロレベルにもどって正値になることはありません。 バイポーラ反則とは、AMI符号のルールに反したもの、具体的に言えば1のときに前の1と極性を反転させないことです。 バイポーラ反則は、バイオレーションとも呼ばれます。 正値のあとに正値、または負値のあとに負値があったら、それはAMI符号のルールに反したもの、つまりバイポーラ反則となります。

BnZS符号は、AMI符号のn個の連続した0を、バイポーラ反則を含む特別なパターンに置き換えます。 代表的なBnZS符号であるB6ZS符号では、6個の連続した0を、0VB0VBというパターンに置き換えます。 ここで、Vはビット1とは逆極性(バイオレーションの"V"です)、B はビット1と同極性を意味しています。 BnZS符号の場合、受信側は、バイポーラ反則を検出することにより、連続する0の先頭を識別します。

B6ZS符号の図

◇選択肢③

選択肢③は、誤った文章です。正しくは、以下のようになります。アンダーライン部分が、誤っていた部分です。

CMI符号は、0の入力に対しては01を、1の入力に対しては00と11を交互に送出する形式である。クロック周波数が情報伝送速度の2倍となり、 高い周波数成分が増加するため、中継距離が短くなる

CMI符号は、ビットスロット中で、0の場合は極性を逆転させ、1の場合は極性を変化させない方式です。 1の場合は、ビットスロット中の極性の変化はありませんが、1が出現するたびに極性を交互に変化さます。 正値を1、負値を0とすれば、問題文にあるように、0のときは01、1のときは00と11を交互に取る形になります。

CMI符号の図

クロック周波数を考えるために、もっともレベルの変化が多くなるケースを考えます。CMI符号では、 0が連続する場合に、もっともレベルの変化が多くなります。比較対象として、両極NRZ符号のパターンを並べてあります。 両極NRZ符号は、0で負値、1で正値をとる単純な符号です。

CMI符号と両極NRZ符号の比較図

図からも分かるように、CMI符号は、ビットスロット中をでのレベルの変化があるために、周波数が高くなっています。 そして、周波数が高くなると、減衰が大きくなるため、中継距離が短くなります。

選択肢④

選択肢④は、正しい文章です。

HDBn符号は、バイポーラ符号列の0がn+1個連続するブロックを特殊なパターンに置換する形式であり、特殊なパターンには、その最終ビットでバイポーラ反則が発生するものが選ばれる。

HDBn符号は、バイポーラ符号(=AMI符号)のビット列において、0 が(n+1)個連続したブロックを別のパターンに置き換える符号です。

HDBn符号では、連続する0を置き換えるパターンの最終ビットには、必ずバイポーラ反則を使用します。 BnZS符号がバイポーラ反則で置き換えパターンの先頭を識別したのに対して、HDBn符号ではバイポーラ反則で置き換えパターンの終端を識別します。

また、直前の置き換えパターンとの間のビット数により、置き換えパターンを変更します。 代表的なHDBn符号であるHDB3符号では、直前の置換パターンとの間のビット数が奇数の場合は000V、偶数の場合はB00Vとしています。 ここで、Vはビット1とは逆極性、B はビット1と同極性を意味しています。

HDB3符号の図

◇出題は深化しています!

今回取り上げた問題は、誤っている選択肢を選ぶ問題です。そのため、選択肢③が誤っていることを見つけられれば、BnZS符号やHDBn符号を知らなくても、 解答は可能です。さらに、同じ問題が平成24年度第2回の問1(3)に、選択肢①~③に限れば平成22年度第1回の問1(4)にも出題されています。 したがって、過去問の知識があれば、解答可能な問題です。

しかし、易しい問題と断じるのは早計です。電気通信主任技術者試験の出題範囲には大きな変化はありませんが、 出題が深くなる傾向が見られます。たとえば「伝送」や「交換」で出題されていたテーマが、「伝送交換設備及び設備管理」に出題されることがあります。 専門的能力の科目では、深掘りや捻りが入る出題も見られます。 たとえば、平成22年度第1回の問1(4)ではmB1C符号が出題されていましたが、平成24年度第2回の問1(3)ではHDBn符号に変わっています。 平成24年度第2回の受験者にとっては、mB1C符号が見慣れないHDBn符号に変わってしまったのです。

過去問は飽くまで今までの出題例です。そのままの形で今後も出てくるとは限りません。第2回の解答解説でも書きましたが、正しい選択肢も掘り下げた、一歩深い学習を進めてください。

◇「理解」も大切に!

CMI符号は、出題頻度が高いキーワードです。「伝送交換設備及び設備管理」でも、出題されています。しかし、信号波形を知っていれば解答可能なレベルです。

しかし今回の問題では、CMI符号について、高周波成分や伝送距離について触れられています。符号のルールや信号波形を知っているだけでは、解答できません。 符号方式のルールに加え、その符号の特性を整理する必要があります。この段階まで学習していないと、 「高周波成分が多い」を引き出せません。

さらに、特性を整理するだけでは、「高周波成分が多い」を引き出せても、「伝送距離が短くなる」は引き出せません。 「伝送距離が短くなる」は、メタリック伝送路や無線における特性である「周波数が高くなると減衰が大きくなる」に結びついて、初めて出てくる短所です。 特性を整理するだけでなく、特性を他の知識と結びつけ、それがどのような長所や短所につながっているのかを整理する必要もあります。

BnZS符号やHDBn符号について理解するとは、確かに大切です。 しかし、このような出題頻度の少ない用語までしっかりカバーするのは、学習効率を低下させる危険性があります。 実は伝送路符号も、今回の問題に登場したもの以外に、DMI符号、mB1C符号などが、問題文に登場したことがあります。 これらをすべてカバーするのは、至難です。

伝送交換関連の出題は、出題範囲が広いため、学習しきれない項目も多くなるはずです。 運悪く学習していないテーマが出題された場合でも、理解をしっかりしていれば、正解を導ける可能性が高くなります。 また、周辺の知識と関連付けができれば記憶にも残りやすくなります。

過去問にない出題への対応の幅を広げるために、そして効率よく学習を進めるために、「覚える」の前段の理解のプロセスも大事にしていただきたいと思います。

このページの図の一部は、日本理工出版会刊「伝送交換設備及び設備管理―専門科目(伝送・交換)にも対応」の一部を、著作者と出版社の許諾を得て使用しています。